紺碧の空

 青い……青いぬけるような見事な青空の下。一面に広がる草原の海にに点在する島のような数本の巨木。まるで緑で出来た海のような光景が広がっていた。
よくよく見れば、草の海にも巨木の中にも淡い色合いの蕾もあるのだが、最初に目に付くのはやはり、草原の海と巨木の島。そんな空間に彼は一人、佇んでいた。

 森の語り部。ただ一人この世界から、行き来する、彼は一族の最後の語り部だった。響く声も朗々と、竪琴の腕前はもちろんの事。森の語り部として恥ずかしくないほどの物語を彼はつむぐ。

 誰も残らなかった、この世界で彼は語り部を続けるために、木々の声を聞く。木々の知る、世界の全てを記憶する。
 彼は、木々を通して、世界を知り、木々を通して世界に出てゆき、その先で語るのだ。世界の物語を。姿は1つでなく。声と心だけは彼のままに。

「ああ、久しぶりの休息ですね……」
 誰もいないこの世界から出て行くのは時間も空間も、空気すら違った世界。語りを終えて帰るこここそが彼の故郷だから。

 誰もいないここで。誰か新しい語り部を見つけなければならなくて。思いが通じ合う、植物と彼は話す。
「いつか、どこかで私の後継者を見つけなければならないんですよね……」
 分かっていても。見つけることが難しいのだ。この世界で生まれたものなら、誰もが持つ力。植物との意思の疎通。
 いっそ、誰かを拉致してこの世界で子供を生ませても。
 それくらい、追い詰められる事もある。でも、けれど。愛情を受けないものは結局歪んでいくから。

 だめだと止める植物たちに彼は笑って答える。
「わかってますよ。ちゃんと。そんな事をしても無意味だって」
 植物たちは、僅かに険悪な空気をにじませる。彼の悪趣味な冗談に、怒りを感じて。

「……怒ってますね?」
 あたりまえだと言わんばかりに誰もいない世界を風が吹く。
「……竪琴1曲で、収まりますか?」
 植物たちが好む彼の竪琴の音色を、曲を彼はゆっくりと爪弾く。
 ゆるゆると流れていく曲に風がからみ、世界に音楽を流してゆく。
 まるで、あわせるように植物たちはざわめき、観客の無いその音楽は世界を流れてゆく。

            とても穏やかに、静かに時は流れていた。

                             終幕










語り部の話。

ええと、これは〜……相当前。リメイクですら、結構前に出したものです。
今回、アップしようと思っていた物が思ったよりも
長くなったため、急遽変更してこちらを書きました〜。

あ、でも、こっちで正解だったかも。アップしようと思ってたのは、
ホラーってゆーか、スプラッタ系だったので(汗)

そんなの書置きして旅行に行くのも、どーよ?って感じですよね。
ははは。この、語り部さん、昔から、こんな感じなんですけど。
前より、今回書いてみて性格軽くなったかも。って感じです。
前は堅物サンだったもんねえ……(苦笑)
そのうち……いつかこちらの本編も載せてみたいですね。
ここに。チャンスがあったら、是非ね。
今日はどうもありがとうございました!また遊びに来てくださいね!
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ってゆーか、寂しいので掲示板ご利用くださいね!?

2002.2.26 比内鶏ひよ(ロンドン出発のその日に)