天使に、いつか会う日。

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 しんじつの やさしいことばにねむる てんしをつかまえる。それは しんじつの ことばのなかにひそむ あくまにまけないため。
 いつか、心を近付ける鍵を手に入れるために。

 クリスマスにずっと、祈っていた。願いがかなう事を。夢に見ていた。手に入れたいものがあったから。

 昨日から、雨は降っていた。乾いた空気を潤して行くには十分な量の雨が。
 どんよりと曇った空から降りてくるそれらは、冬の雨らしい冷たさを誘い、ヒンヤリとしていた。
「……雪にならないかなぁ……」
 窓辺で、降り続ける雨を見つめて呟いた。
 夜が近付くにつれて、雨の冷たさは増すのに雪に変わるような気配はない。12月に都心で雪を期待するのは無理と言うものなのだろう。
 窓ガラスは曇っているが、雪に変わるほどの低い気温にはならないようだ。雨足も弱まりつつあった。
「雪が降ればいいのに」
 小さく小さく、呟いてみる。それは小さな願い。きっかけになるはずの願い。

「ちょっと、やめてよねー?さっきっから、聞いてれば、雪、雪って!本当に降ったら、仕事に行くのも大変なんだから、変な事期待しないでくれる!?」
 思う度に否定される言葉。一緒にいるのが辛くなる、家族が悲しかった。
「……夢を見るくらい、いいじゃない?」
 それすらも、許されないのだろうか。
「そんなことより、勉強してきなさい!もう直ぐ、受験でしょう!?」
 ただ、すれ違っていく言葉。どうしても手に入れたいのは、肯定の言葉。理解される為の、手段と方法。
 クリスマスに雪が降ったなら、祈りのような願いが叶うような気がしていた。ずっと、ずっと。










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