天使に、いつか会う日。

−2−

 優しくしたかった。優しくされたかった。
 そして、自分を認めて欲しかった。

「せっかく、イブから降ってるんだから、雪に変わってもいいと思うんだけどなあ……」
 母親に否定された言葉を胸に、小さく繰り返しながら部屋へ向かう。勉強をする為ではなく、雪を望む為に。

 雪が好きだった。自分の中で育ち続けている、痛みを伴う感情が一瞬だけでも、消えるから。
 憎しみも悲しみも全て、忘れていられる瞬間があるから、雪を望んでいた。子供のようだと馬鹿にされても。

 親の望む自分と、自分がなりたい存在に大きな隔たりがある。自分の能力以上のものを望まれている事に気がついた時には、親はもう、自分の言葉を認めてくれる存在では無くなっていた。
 それに気付いた時、大人も意外と現実を見ていない事が分かった。そして、それが悲しかった。
「ほんの少し、この手に雪を捕まえる間だけでいいのに。望む雪は、それだけなのに……」
 言葉全てを否定されても、望みは消えない。例え、失望すると分かっていても。

『期待するから、失望するんじゃないか。だったら、何も期待しなければいい。自分だけを信じていれば、いい』
 クラスメイトがしゃべった、言葉を思い出した。そうじゃなく、そんな悲しい事じゃなく……伝えるための言葉を持たない自分がもどかしかった。
 大事なのは変わらないのだ。どれだけ悲しんでも、傷ついても。
 幸せの価値観が違うだけ。クラスメイトとも、自分の親とも。ただ、認めて欲しいだけ。
 この思いを。望んでいる事を。











                   次のページへ