満開の桜の下で。

−3−

 どのくらい時間がたったか、わからないくらい手がドロだらけになり、しびれる感じがしてきた頃。
小さな手ごたえがあった。
 また、小さな石だろうと二人は思ったが、それでも、二人の小さな手は早まる。
 手ごたえのあった辺りを丁寧に掘り返す。しばらく掘ると、出て来たそれは、石とは思えない大き
さになってきた。泥がついて、何だかわからないくらい、形ははっきりしないけれど、細く長い物……。
桜の根も薄くはり始めている。多分、それは……骨で……。

 二人は立ち上がった。ゆっくり……と言うよりは、のろのろと。
「きっと、おばあちゃんだね」
「……うん、やっぱりここに、いたんだね」
 土を除けて二人、夜中に聞いてしまった、両親の会話を思い出していた。

 ──── だって……あなた!お義母さんの言う通りにしていたら、これから、どうなるか、わから
なかったわ!私には、いくらでも嫌がらせをして、子供まで味方につけて!偶然、振り払ったら、あ
あなったけど、そうでなかったら……私っ!!
 ──── わかってる。だから、僕だって、おまえの望むように、そして、子供の事を思って、母さ
んの一番好きな場所に埋めたんじゃないか!あの人の好きだった、木の下に……。

 諦めるように、二人は満開の桜の下に立つ。どちらからとも無く、互いの手を握り合い……。
「電話、しに行かなくちゃ」
「うん。110番だよね?……お金、入れなくても、いいんだったよ……ね?」
 とぼとぼと、二人は庭を抜けて、今度は門から外に出た。手は繋いだまま、歩き続けて、坂を降
りる。右手に少し行った所に電話ボックスはあった。
 カシャン
 電話ボックスの扉を開けて、二人はその狭い空間に入り込む。一人が受話器を取り、もう一人が
ダイヤルをした。











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