生垣は隙間がせまくなり、去年より成長している、彼らの体に沢山の引っかき傷やみみず腫れを 作った。二人とも、幸運な事に深い傷はなく、そのまま目指していた桜の木の下に立った。
「着いたね」 「……うん」
二人は少ない言葉を交わすと、互いのリュックサックの中からそれぞれ、移植鏝を取り出した。 桜の周りを移植鏝で掘ってみる。以前この辺りに住んでいた時には野良犬を結構、見かけていた から。
「きっと、掘り返した後があるよ」 「そうだよね!」 少しでも、柔らかく感じる所を掘り返そうと決めていた。
「……この辺、じゃないかな……」 「うん、そうだね……」
祖母が見つかると良いという、期待と、間違いであってほしいと言う願いを心に、二人は桜の根元 を掘り始めた。根をよけながら、人を埋められるような隙間を探して……。
ザクザクザクザク…… ザクザクザク……
音は空気に混ざって、鳥も声を掻き消す。少なくとも、二人の耳には土を掘り返す、自分達の出す 音しか届かなかった。
桜の根元を掘りながら、二人は共に、探すその人がここで眠ってなど、いない事を祈っていた。心 の何処かで、見つかって欲しいと、思いながら……。
ザクザクザクザク…… ザクザク……カッ
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